より良いプロダクトデザインのためのチームビルディング 〜インセプションデッキ〜

こんにちは、デザインチームの岡田です。
最近はリモートワークによる運動不足解消のため、エアロバイクと筋トレを始めました。 モチベーションを保ち続ける難しさを痛感しています。

普段はインフキュリオンでプロダクトやコーポレート周りの様々なデザイン業務をしていますが、 今回は過去に実施したチームビルディングのプラクティスの一つ、インセプションデッキについてご紹介したいと思います。 インセプションデッキそのものの紹介や詳しい内容は、検索するとたくさん出てくるので、 今回は実施した背景や簡単な内容、やってみて気づいたことなどをまとめてみました。

なぜデザイナーがチームビルディング?

私がチームビルディングに興味を持ったきっかけは、良いプロダクトのデザイン=設計のためにはさまざまな職種、能力を持った人々が集まったチームで力を最大限に発揮する必要があるなと感じたためです。

プロダクトを作るためにはビジネス、技術、ユーザ視点など多くの観点がある他、 関わる人の能力や目線、想いなども様々な上に、トレードオフも多く発生します。

それぞれのベクトルが違う方向に向いていると最終的な力が小さくなってしまうため、
目線を合わせた上でチームとして力を発揮しやすくする必要があります。

チームビルディングは誰がやるべきか?

役割としてはマネージャーやスクラムマスターといった人達が中心となって実施するケースが多いかと思いますが、特定の職能チーム内でやる場合もあれば、チーム横断でやる場合もあり、その時々で適した人がやればいいのではないかなと思っています。 チームビルディングには様々なプラクティスがあり、状況によって目的をしっかり考えた上でファシリテーションする必要があるので、ある程度専門的にできる人がいると、より良いのかなと思います。

それでは、実際にやってみたプラクティスの一つ、インセプションデッキについて、
実施した背景や、やってみた感想などを紹介できればと思います。

インセプションデッキ

もともとアジャイル開発の文脈で出てきたものですが、特に開発スタイルやプロジェクトの内容に関係なく応用できると思います。
内容は、簡単に言うと以下の項目についてチームで話し合い、プロジェクトの目的や方向性等の認識合わせ、判断基準を作るために実施します。

  1. 我々はなぜここにいるのか?
  2. エレベーターピッチ
  3. パッケージデザイン
  4. やらないことリスト
  5. ご近所さんを探せ
  6. 解決案を描く
  7. 夜も眠れない問題
  8. 期間を見極める
  9. トレードオフスライダー
  10. 何がどれだけ必要か

それぞれの項目についての詳細や、インセプションデッキについては検索すると色々出てくるのでここでは割愛します。

こちらの書籍で紹介されてから知れ渡ったようなので興味のある方は読んでみてください。

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必ずしも全ての項目をやるわけではなく、必要に応じていくつかピックアップして実施するのが良いかと思います。

実施の背景

自社のプロダクトである決済プラットフォーム(Wallet Station)を顧客アプリに導入するにあたり 以下の2つの側面でどうするか、インセプションデッキを作成して社内の認識合わせをしてみようという流れで実施することになりました。

・顧客への導入プロジェクトとしてどう考えるか ・その中でマルチテナント方式の自社プロダクト(Wallet Station)としてどうするべきか

特定の顧客アプリへ提供するサービスとしての側面と、マルチテナント方式の自社プロダクトとしての側面、2つのベクトルがある中でどういう方向を向いて進むのかについて、インセプションデッキの作成を通じて議論しました。

基本的には1つのサービスやプロジェクトに対して実施するものですが、 今回は2つの軸で実施してみました。

実施内容

今回はプロジェクトに関わる人達の思っている問題や優先順位にフォーカスしたかったので 以下の4つの項目について実施しました。

1. 我々はなぜここにいるのか?
このプロジェクトで何を達成したいか、目的やゴールを明確にする。

4. やらないことリスト
やりたいことややった方が良いことは多くなりがち。その中で「やること・やらないこと」を明確にする。

7. 夜も眠れない問題
プロジェクトを進める上で起きそうな問題をチームで共有し、対策を考えるなどしてリスクを減らす。

9. トレードオフスライダー
納期、予算、品質などについて優先順位をつけて判断の基準を作る。

今回はオンラインホワイトボードツールのmiroを使って実施しました。 大きなホワイトボードや付箋を用意しなくても、オンラインで付箋を使ったワークショップや アイデアの整理などが可能です。

我々はなぜここにいるのか?

プロジェクトの目的をそれぞれ付箋に書いて出し合い、グルーピングしながら整理し、 最終的に投票して、目的やゴールを整理します。

やらないことリスト

顧客へ提供するサービス、自社プロダクトとして、このプロジェクトで何をやって何をやらないのか、それぞれ付箋で出した後に 議論しながら、やること、やらないことに分類します。すぐに決められないことは「後で決める」に分類します。

夜も眠れない問題

すでに起きている、または起こりうる問題を出し合います。チームをまたいで問題点を共有することで 個別のチーム内だけでなく、全体で対策を考えることができます。

トレードオフスライダー

納期、予算、品質などの基本的な項目に加え、プロジェクト独自の項目を追加して、 優先順位づけをします。名前の通り、スライダーで各自マッピングして、なぜその位置にしたか、などを話しあって最終的な位置を決めます。
(分かりにくいですが、実際に実施した下の例ではそれぞれのスライダーの位置がかなりバラついています。このバラつきを、話しながらある程度揃えて一つの位置に決めていきます。)

やってみてどうだったか

参加していただいた方のFBとして良かった点としては大きく2つの点が挙げられました。

  • 目線合わせ、認識合わせができる
    • 足を止めて考えることが出来て良かった。まさに足並み揃え。
    • 色々な観点の議論と認識合わせが出来たので有意義だった。
    • 統一意識と認識を持って進む。は、重要だなと感じた。
    • 2軸で考えるのが難しかったが、このプロジェクトの本質がこのワークショップで考えなければならないことだったと再認識
  • チームビルディング・モチベーションアップにつながる
    • 新しくジョインしてくる人にとっては、現在どういう課題があって、これからどうしたいのかが凄く見えやすかった
    • プロジェクトに対して、点ではなく、大きな視点を持って取り組めると感じた。
    • このウォームアップがあるかないかでPJ進んでいく中で悩んだり、怪我する頻度と程度が変わるかもと思った。
    • このご時世直接会話しづらい中、会社の仲間とコミュニケーションが取れ、それぞれがどういう考えを持っているのかが分かって面白いし、新しい発見に繋がる。

また、課題としては以下のようなものがありました。

  • なるべく他のこと(実業務)に気を取られない環境で実施したい
  • 同じところで意見出しをすることも大事だと思うが、今回のように長丁場になることも考慮すると、意見出しやカテゴリ分けは事前にやってもらう形で良いかも。
  • 今回くらいのボリュームだと、丸一日くらいの時間が良さそう。(議論しきれない部分が多かった)
  • お酒の席で仕事の話をしたくない人もいると思うが、ご飯やお酒を嗜みつつ、やるのはあり。
  • 小規模でもこういった取り組みを実施していけると良いなと感じた。

私個人としては、参加するメンバーの属性や人数、プロジェクトの理解度などによって適切な時間配分や進め方を決めるのが大切だなと実感しました。

まとめ

今回は時間的にもコンパクトに実施したため、少し物足りない感じにはなりましたが、
良かった点、課題点も含めて得るものがありました。

通常業務が忙しい中、こういった取り組みを組み込んでいくのはなかなか難しかったりします。 ですが、部分的に取り組むこともできるので、要所要所で取り入れていけると、長い目で見た時のプロダクトの完成度やチームとしての力が高めていけるのかなと思います。